トピックス

年頭のご挨拶

2024年01月05日金曜日 配信

新しい年が明けました。

年明けから地震や事故、事件が続いています。
被災されているみなさんのご無事を心から祈らずにはいられません。
そして救助や支援にあたっているみなさんの献身に敬意を表します。

世界に目を向けると、ウクライナとガザ地区での戦闘は終わる兆しが見えません。
世界各地の惨状に胸を詰まらせ、苦難を受けている人々に心を寄せる年明けです。

普通の生活を送ることができることへの感謝と、
やるべき務めに尽力する尊さを改めて感じます。

心が惑わされることが多い今日、
自分がなぜ生かされているのか
どのような使命が与えられているのか
どんな人たちと、何をしたいのか

自分自身と
仲間と
まずはしっかり話し合っていこうと思います。

今年は新しいことをいくつか始める予定です。
同じ志を持つ仲間の輪を広げ、様々な活動や探究を共に進め、
社会に少しでも貢献できる私たちであることに力を尽くします。

そして、大切にしてきたことを守りながら、
変えるところは大きく変えていこうと思います。

これまで私たちを支えてくださったみなさまへの感謝をお伝えすると共に
今年もみなさまにとって愛に溢れた一年となりますよう
心よりお祈りもうしあげます。

株式会社プレイバック・シアター研究所
プレイバック・シアター ラボ

羽地朝和  スタッフ一同

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【コラム】

2023年11月02日木曜日 配信

スキルの伝承

 企業で技術・技能の伝承が必要だと言われて久しい。これはその人にしかできない匠の技を後進に伝授するという意味や、ベテランクラスが身につけてきたスキルを下の世代に教授する、という意味ですが、これがうまくいっていないことが多い。なぜうまくいかないのか。まず、その技術や技能はマニュアル化できるレベルのものではなく、その人の身についた固有のものであり、形として残すことが難しい。またベテランの技能者たちは、若い頃先輩たちの仕事を見て、まねて、それから無数の失敗・成功の経験を積みかさねて技術を身につけてきたので、教えてもらった経験がない。だから教え方を知らない。手取り足取り教えることは苦手である。いっぽうで「先輩たちの背中を見て学べ」とは口に出しにくい風潮があるなかで、下の世代になればなるほど、失敗や成功の経験を積み重ねて学ぶことが不得手だったりする。さらに、ベテランは若手に対して、若手はベテランに対してコミュニケーションをとるのが難しいとお互いに思っている。組織のなかで先進のスキルを後進に伝えるのに、いったいどういう良いやり方があるのだろう?

 その答えのひとつがミャンマーにありました。 
 数年前まで毎年のようにミャンマーに通い、ミャンマーの仲間たちと一緒に旅をして孤児院や障がい者の施設を訪れプレイバック・シアターを行いました。生活を共にし、食事も地元のお店に連れて行ってもらいました。それらのお店の中に従業員の接客が素晴らしいお店がいくつかあり、聞けばそれは同じ経営者が経営するお店でした。ちなみにその従業員は小学生から中学生ぐらいの子どもたちです。子どもたちを働かせることは現代の日本では考えられませんが、ミャンマーでは飲食店で子たちが働く姿を普通に見かけました。その系列店は高級店ではなく庶民が通うお店でしたが、気配りが行き届いた洗練されたサービスを子どもたちが提供してくれてとても驚きました。食事が終わってお店のリーダー格の人に、「接客のサービスがとても良かった。これほど素晴らしいサービスを提供するスタッフを育てる教育をどのように行なっているのか、ぜひ教えて欲しい」とミャンマーのプレイバック仲間に通訳してもらいたずねたところ、次のような育成をしていると教えてくれました。まず、お店のスタッフはある地方の同じ部族の子どもを採用するのだそうです。ミャンマーは多民族国家で、確かにそう言われると顔つきや肌の色、身体的な特徴など従業員の人たちは似ています。地方から上京して従業員は同じ場所(だいたいはお店の2階だったり)で生活をして働きます。そして新しく入ってきた子に一人の先輩が指導担当としてつき、その先輩後輩は寝たり食べたり生活すべてを共にし、はじめの3ヶ月は仕事中も後輩は先輩の後にくっつき、先輩の仕事ぶりを見るのだそうです。そして3ヶ月たってあらかた仕事を見て覚えたら、今度は後輩に仕事を担当させ、先輩がついてまわり、指摘をしたりして指導をする、それを3ヶ月行い、新人は半年たったら一人前として扱われて、今度は先輩として新人を指導する立場になる。素晴らしい仕組みです。これをそのまま現代の日本企業に取り入れるのは無理だとしても、先進が後進にスキルを伝え、育てることを考えるうで参考になることがたくさんあるように思います。

 

 組織のトップを育てる事例で思い出したことがあります。30年ほど前の話です。元日本IBMの専務で藤沢工場の工場長をされていたYさんと一緒に仕事をしたことがあります。当時の日本IBM藤沢工場はPCの基幹工場で、Yさんは人材育成に真剣に取り組む経営者でした。僕にとってはクライアント先のトップキーパーソンです。引退後は研修講師をされ、僕はYさんと一緒に研修の仕事をしました。ご自宅にも招いていただいて20代の僕はずいぶんとかわいがってもらい、いろんなことを教えてもらいました。
 ある時に「経営者を育てる人材育成の方法にはどのようなものがありますか。Yさんは自分の後継者をどうやって育てたのですか?」とたずねたところ、次のようなことを教えてくれました。
まず次期工場長の候補者、つまり自分の後継者として相応しい人を5名選び、その一人ひとりを半年間ずつ自分にぴったり付けさせて、自分が仕事でやっていることを全て見せたそうです。机も隣に置き、業務中はもちろん、接待の席も全て一緒で、そして何か問題が発生したり、自分が決めないといけないことが生じたら、「あなたならどうする? どう決断する?」とその度に問うたのだそうです。こうして半年間一緒に過ごして、経営者として自分がやっていることを見せて、「あなたならどうする」を問い続けるのが、Yさんの経営者の育成方法で、「自分の失敗もすべて部下に見せるのだから、けっこう大変だったよ」と豪快に笑いながら語ってくれました。後継者育成に工場長自らがここまで心血を注ぐなんて!と驚きました。

 二つのストーリーは人材育成、スキル伝承を考えるうえで大切なことを教えてくれます。プレイバック・シアターのコンダクター、研修講師、ワークショップのファシリテーターはその人固有の技を持つ職人です。技を伝える、スキルを学ぶ場づくり・仕組みづくり、それにとても興味があります。

 羽地朝和

[2023年8月発行『ラボ新聞vol.9』 掲載コラムより]

 

【お知らせ】適格請求書発行事業者登録番号のお知らせ

2023年09月29日金曜日 配信

 

2023年10月より施行されるインボイス制度に伴い、適格請求書発行事業者登録番号を会社概要に掲載しました。

プレイバック・シアター研究所の適格請求書発行事業者登録番号は下記となります。

T1020001085558

 

【コラム】ビジネスの2つの考え方

2023年09月04日月曜日 配信

サービス提供と共同作業

 30年前にプレイバック・シアター研究所を設立し、10年前に株式会社にしました。この5月に原点に立ち返り任意団体プレイバック・シ アターラボでワークショップを行うことにしました。岩橋由梨さんの朗読ワークショップ、オーハシヨースケさんのアプライドドラマ研究会、アーツ・ベースド・ファシリテーター養成講座、ゆりうララなど現在行っている各種ワークショップ、ゴールデンウィークの和歌山 竹由庵での合宿、新たな催しや各地におもむいてのワークショップを実施していきます。

 

 (株)プレイバック・シアター研究所ワークショップ事業部からプレイバック・シアターラボへ。私たちが原点に帰る理由はワークショップと研修、セラピーという違った領域で仕事を続けながらなんとなく感じていたことが根底にあります。
(株)プレイバック・シアター研究所の事業領域としては、企業を対象にした研修事業、個人を対象にしたワークショップ事業、そして沖縄で心と身体の健康づくりをお手伝いする心身堂鍼灸整骨院の3つがあります。この3つの事業領域で、僕自身は研修講師、プレイバック・シアターのコンダクター、ワークショップのファシリテーター、そしてクリニックでのグループセラピー、大学・看護専門学校での授業などを担当しています。様々な領域を行き来していると、それぞれの領域ごとにビジネスの考え方に違いがあることを感じます。それは例えば提供する側とお金を支払う人との関係、そしてアウトプットに対する考え方の違いです。

 ビジネスを「モノやサービス提供ビジネス」と「共同作業ビジネス」という2つで考えてみましょう。

 一般的には企業が行うビジネス活動は「モノやサービス提供ビジネス」です。これは提供する側(企業)がお客様からお金をいただき、それに見合ったモノやサービスを提供することで成り立ちます。基本的には提供されるモノやサービスの品質は安定していて均一であることが求められます。そして金額に見合ったモノやサービスを提供する責任を企業は求められ、金額に見合っていなければクレームとなります。提供側の企業とお客様の間には明確な境界線があり、「お客様」という呼び方がこの関係性を象徴しています。B to C(企業対個人ビジネス)でもB to B(企業対企業ビジネス)でも企業のビジネスはこの考え方で成り立っています。

 もうひとつの「共同作業ビジネス」の概念が見えてきたのは岩橋由梨さんの竹由庵再生の経験からです。竹由庵はゆりさんのひいお祖父さんの家で、お亡くなりになった後50年間誰も住んでおらず放置されていた古民家です。先日初めてうかがうと予想していたより荒れ果ててはいませんでしたが、相当の修理、修復、掃除が必要な状態でした。ゆりさんは修復をモトさんという古民家リノベーションの専門家に相談しました。竹由庵の掃除をお手伝いする際にモトさんとカマド(ゆりさんは “へっついさん” と呼んでいます)の修復作業をご一緒させていただきました。古民家のリノベは何をどの順番にどれぐらいやったらいいのかは素人にはまったく分かりません。リノベの専門家はどこをどう直す必要があり、予算によってどこまでどんな材料を使い、どんな順番がいいのか見通せますが、決めるのは発注者です。専門家がいくらこうしたら良いと思っても、発注者がそこをどう使い、どうしたいのかによります。しかし発注者はどうしたいのか、何ができるのかは分かりません。サービス提供者と発注するお客さんが信頼し合い共同作業で取り組まないと、双方にとって良いものはできません。また出来上がりの姿をサービス提供者はイメージしていても、確約はできません。お客さんと伴走しながら望む姿を見つけていく感じです。一方で住宅会社から一戸建ての家を買うとなるとモデルハウスやパンフレットを見れば出来上がりの製品(家)を確認でき品質も保証されます。古民家のリノベは一方的な「サービス提供」ではなく、専門家と発注者が一緒に取り組む「共同作業ビジネス」と言っていいでしょう。
 これはワークショップにおける主催者と参加者の関係にもあてはまります。ワークショップはファシリテーターと参加者の共同作業です。一方的にサービスを提供する、サービスを受けるという関係ではありません。ワークショップで得られるものをファシリテーターはイメージしていても確約はできません。参加者と一緒に場をつくり、まだうまれていないものを探していく感じです。主催者と参加者は一緒に場づくりに取り組む関係なのでお客様と呼ぶのはなんだか違う感じがします。そして両者の間の境界はぼんやりしています。

 「モノやサービス提供ビジネス」と「共同作業ビジネス」の2つがあると考えると、企業のビジネスは「モノやサービス提供ビジネス」で、 企業とお客様の間の境界線がはっきりしています。一方で、ワークショップは「共同作業ビジネス」として行うのがふさわしく、主催者と参加者の関係はあいまいで流動的です。このあいまいで流動的な関係とアウトプットの不確かさは企業は苦手です。企業を対象にした企業研修の領域は「モノやサービス提供ビジネス」の世界ですが、僕が 「共同作業ビジネス」の立ち位置で進めようとすると間に入る研修会社やクライアント企業との間で齟齬(そご)が生じることがあります。 研修やコンサルティングなどの「モノやサービス提供ビジネス」に「共同作業ビジネス」の要素を取り入れるといいのにな、と思うことがあります。

 

 GW合宿「古民家と竹林再生ワークショップ」は、竹由庵での生活と竹林の整備にみんなで取り組みます。私たちは企画と準備を進めていますが、集まった人それぞれがやれることをやるでしょうし、 やりたいことを持ち寄ってくれるでしょう。当日の天気、生まれたアイディアによってどうなるか予想がつきません。今のところ、カマドでご飯を炊き、ここでどう過ごすか、竹林をどうするかを一緒に考え、ワークショップを行い、不自由な生活を共にすることを考えています。竹由庵で私たちがこれから創りだす場はそこにいる人しか経験できないものです。このような共同作業は仲間で取り組むことが相応しく、企業で行うと規則に縛られたり責任や境界、明確なアウトプットが求められるようになります。プレイバック・シアターラボは主体的な個人が集まったチームで参加者との共同作業を生み出す集団です。ワークショップのみならず芝居やダンス、音楽などの生身の人間が営むアートはまさに表現者と参加者(観客)による共同作業です。僕はワークショップは共同作業がうみだすアートの作品だと思っています。

 やりたいワークショップを自由に表現し、いろんな土地や場所で様々な人たちとワークショップをうみだす専門家のチーム、というのが僕の30歳の頃の原点です。ここに戻ることが今回のプレイバッ ク・シアターラボを立ち上げた主旨です。みなさん集ってください、かかわってください、ワクワクする共同作業を、アートの作品を一緒に生みだしましょう。

羽地朝和 

[2023年4月発行『ラボ新聞vol.8』 掲載コラム]

 

羽地朝和インタビュー「集合研修と経験から学ぶ 後編」

2022年12月22日木曜日 配信

株式会社プレイバック・シアター研究所所長羽地朝和が研修を語るインタビューシリーズ。

第四弾のテーマは「集合研修と経験から学ぶ 後編」です。

羽地の研修の特徴を自ら分析しています。

 

ぜひご覧ください!

聞き手:岩橋由梨

羽地朝和インタビュー「集合研修と経験から学ぶ 前編」

2022年12月01日木曜日 配信

株式会社プレイバック・シアター研究所所長羽地朝和が研修を語るインタビューシリーズ。

第四弾のテーマは「集合研修と経験から学ぶ 前編」です。

羽地の研修の特徴を自ら分析しています。

 

ぜひご覧ください!

聞き手:岩橋由梨

羽地朝和インタビュー「ヒアリング研修(後編)」

2022年10月25日火曜日 配信

株式会社プレイバック・シアター研究所所長羽地朝和が研修を語るインタビューシリーズ。
第三弾のテーマは「ヒアリング研修」後編が公開されました。

ぜひご覧ください!

聞き手:岩橋由梨

羽地朝和インタビュー「ヒアリング研修(前編)」

2022年10月17日月曜日 配信

株式会社プレイバック・シアター研究所所長羽地朝和が研修を語るインタビューシリーズ。
第三弾のテーマは「ヒアリング研修」。ぜひご覧ください!

聞き手:岩橋由梨

羽地朝和インタビュー「ベテラン層の研修(後編)」

2022年10月04日火曜日 配信

株式会社プレイバック・シアター研究所所長羽地朝和が研修を語るインタビューシリーズ。
第二弾のテーマは「ベテラン層の研修」。ぜひご覧ください!

聞き手:岩橋由梨

【研修記録】わたしをほどく〜セルフケアの観点から〜

2022年09月28日水曜日 配信

(岩橋由梨)

東京都のある社会福祉法人で「わたしをほどく〜セルフケアの観点から〜」というタイトルでメンタルヘルスの研修を行いました。

その法人は、介護老人保健施設をはじめ、デイサービス、高齢者住宅、地域密着型多機能ホームなど複数の事業を展開しています。

このコロナ禍で第一線で働いている皆さんを対象に、事業間をまたいで、職場の役割を少し横において、職員同士がひと息つけるような時間を作ってほしいというご依頼でした。

最近、わたしの研修でもこういったご依頼が多くなってきました。コロナ禍で対面のコミュニケーションが少なくなってしまったので、働く者同士の風通しをよくしたい、コミュニケーションをよくしてほしい、といったような内容です。特に医療教育団体や支援団体、保育園や幼稚園研修などを担当して感じるのは、他者に親身になっている方ほど自分自身の時間を当然のように削りがちで、そしてみなさん頑張り屋さんが多いですね。

介護関係の方と伺うと自動的に6年前に他界した父のことを思い出してしまいます。介護施設の方、ケアマネさん、そして最後の時を自宅で迎えられるよう交代で世話してくださった看護師さんなど、みなさんのプロの対応に、今でも心から感謝しています。人生を終えようとしている父に対する接し方、介護している我々家族に対する声かけなど、家族の死に直面していく我々にちょうどいい距離感で見守ってくれました。これはそれぞれの家族の関係性や個人の死生観にも直接関わってくる場合もあり、特有のストレスもあるだろうと考えます。専門的な介護の知識はありませんが、みなさんが自分の時間だと思える過ごし方は何だろうかと考えました。

ひとつは他者に気遣うように自分にも注意を向ける、自分を大切にするように、他者にも気遣うというセルフケアの観点を入れること。

これは、数年間、一般社団法人リヴオンの代表である尾角光美さんと共に真宗大谷派の僧侶の教師養成課程にグリーフケアの授業を入れるというお仕事をさせていただいた時に学んだ観点でもあります。グリーフとは、大切な人や物をなくした時に起こる人それぞれの反応のことです。ここではグリーフケアの概念を学ぶ際の大きな柱の一つに「自分自身を知ること」を取り入れていました。他者が何かのグリーフを抱えた時、共にいる自分自身のグリーフも影響を受けます。自分自身の今を感じることが必要だという姿勢は、とても学びになりました。

わたしも自分のワークショップの一番はじめには、いつもみなさんの今の体調と心の調子を伺います。

やるべきことで頭がいっぱいになっておられる方ほど、「今の自分の気持ちや体調は?」と伺うと「え?」と止まってしまわれます。自分のことなどいいです。とおっしゃる方も。けれど、この時に少しでもご自身のことを言葉で話してくださると、それがあとから徐々に効いてきます。口に出したことで自分のことを気にかけ始めるモードに入るのですね。

自分の今に気づきながら他者への働き方を考えるのと、自分を感じることなく他者の方のために動くのとでは、動き方が変わります。(もちろんこれは程度の問題でもあるのですが、介護や支援を仕事にされている方には特にそう思います)

研修は、今の自分を携えて人と関わっていただくところからのスタートです。
そのあと、ストレッチや深呼吸をして、ちょっとしたゲームを行いました。

このゲームは頭でわかっていてもなかなかスッとは実行できないことを楽しく行います。わかっていてもできないこと、うまくいかないことを笑い飛ばす!そんな時間です。

次は、二人組になって相手に「お願い!」「だめ!」とだけ言いあう時間。

お願いする人は「お願い!」という言葉を言い続け、もうひとりは「だめ!」とだけ言い続けます。何がだめなのか、何をお願いしているのかは一切説明できません。なのに、懇願の「おねがい〜」に甘えた「だ〜め!」を言ったり、直立不動の「お願いします!」に座っている人が「だめ」と小さな声で一言言っただけで2人の関係にストーリーが見えてきます。この場は所詮虚構の世界、普段は言えないことを思いきり言って発散してもらいました。

これも介護士さんや看護師さんに保健師さんなどによく行います。今回も「こんなふうに『だめ!』とだけ言って電話が切れたらどんなにいいか…」としみじみ話される方が1人や2人ではありませんでした。

そのあとはそのことをもう少し発展させた「怠け者のお姫様」をなんとか外へ連れ出す即興のやりとりや、言葉のイメージを形にして共有するもの、今思い浮かんだことをただ聞いてもらう時間など、とにかく虚構、リアル関係なく、ご自身が「今」感じていることを人に聞いてもらう経験をたくさんしていただきました。

活動の最後は、自分が普段リセットするためにしていることを可視化し、共有します。普段リセットのために行っていること、やってみたいことを具体的に一枚につきひとつ付箋に書いてもらい、それを全員ホワイトボードに貼り付けて眺めるのです。ホワイトボードには、1人で行うこと、他者と行うこと、身体的か内面的かと座標軸を書いてあり、そこに自分で書いたものをふり分けて貼っていただきました。特別な時にしかできないこと、日常でもできること、コロナがあけたらやりたいことなども書いてみんなで眺めました。
眺めてみると、自分の傾向がよく見えてきます。

(続きはnoteにて、全文無料でお読みいただけます!)

https://note.com/playbacktheatre/n/nad42eda03ec6

羽地朝和インタビュー「ベテラン層の研修(前編)」

2022年09月21日水曜日 配信

株式会社プレイバック・シアター研究所所長羽地朝和が研修を語るインタビューシリーズ。
第二弾のテーマは「ベテラン層の研修」。ぜひご覧ください!

後編は後日公開予定です。
聞き手:岩橋由莉

羽地朝和インタビュー「最近の研修の特徴」

2022年09月06日火曜日 配信

株式会社プレイバック・シアター研究所所長羽地朝和が研修を語るインタビューシリーズがスタートします。

第一弾のテーマは「最近の研修の特徴」。ぜひご覧ください!

聞き手:岩橋由莉

羽地朝和への逆1on1③〜管理職研修〜

2022年06月21日火曜日 配信

【羽地朝和インタビュー】スタッフが社長に15分1on1をしてみる③「管理職研修」

 

近年、組織開発のなかで部下の成長を促す方法として注目される1 on 1。
この企画では、それを立場を反転させて行うことを試みます。そのようすをインタビュー記事にしたものです。

話し手:
羽地朝和(プレイバック・シアター研究所所長・コンダクター・研修講師)

聞き手:
向坂くじら(プレイバック・シアター研究所スタッフ・詩人)

 

フルバージョン(note)はこちら↓(無料)

https://note.com/playbacktheatre/n/n7a255f1386c7

 

教育の成果は、単に目的を達成したかどうかだけでは測れない


―なんか、ちょっと意地悪な質問な気もするんですけど。
研修には、ひとつひとつ目的があるんですよね。ハラスメントの防止であったり、管理職や新入社員の育成であったり。
そういう目的が達成されたかどうかは、羽地さんから見て確認できるんですか? その大きな目的とはまた別の軸で、「今日の研修はよかったな」っていうこともあるとは思うんですけど……。

僕にできる確認は、三つありますね。研修内で参加者のみなさんに「今日学んだこと」を発表してもらうと、まずはそこから推察できます。研修が終わった後に、アンケートの結果を見せてもらうこともあります。それからもうひとつ。クライエントから、「去年の研修がすごくよかったからまた今年もお願いします」と依頼をいただける。それはひとつの評価かな、僕の場合はそれが多いね。僕が研修の目的を達成できたと感じられるのはそういうところかな。

でも、たとえば学校の先生とかもね、もちろん合格したしないもひとつの評価ではあるけれど、それはあくまでたくさんある中のひとつに過ぎないと僕は思うの。受験に落ちてしまった生徒は先生たちにとっては単なる失敗なのか、と言うと、そういうことではないよね。受験の合否とはまた別に、「長い人生の中で役に立つことを学校の中で学べたかどうか」っていう軸もある。
僕は、中学高校が長崎の学校なんだけど、卒業して二十年以上経った後、プレイバックをやるために長崎に帰ったことがあって。そのとき母校にもちょっと行ったの。私立で先生に異動がないから、まだちゃんと自分が習った先生たちがいて。
で、「こんなことやるんです」って話したら、先生たちがみんなプレイバックを観に来てくれてさ。いまの生徒にも話してくれたり、ある先生の娘さんは地元のテレビ局のアナウンサーをやってるらしくって、その娘さんまでわざわざインタビューに来てくれたり。
そういうのを見ると、やっぱり先生って言う職業はすごいなあと思う。二十年経ってもこの先生達は、僕たち教え子のことを本当に大事にしてくれている。だから、受験でいい学校に合格するだけが先生達の成果じゃないっていうか。そのとき僕を見た先生達が、たぶん、喜んでくれていたのを見て、「教え子の大人になった姿を見ることが、先生たちにとってひとつの成果なんだな」って、そのとき逆に感動した。この人たちはそういうところに生きがい、やりがいを感じてるんだと言うのを肌身で感じて、感動しましたね。

―教え子の立場に立ってみて、そう思えたということですね。

くじらちゃんも、これから子どもを育てる仕事をするわけだよね。それも、受験の合否みたいな単純な成果じゃないよね、もっと大きなことを多分やってる、やろうとしているんだと思いますよ。なんか、「大人になることを信じる」っていうのかな。くじらちゃんの関わった子どもたちが、大人になること、社会に出ることを信じられるようなことを、くじらちゃんはたぶんやろうとしてるんだよね。
僕がいまの時代に残念に思っているのは、やっぱり今の若い人たちや子どもたちは、どうも大人になることとか社会に出ることを恐れてしまったり、不信感を持ってしまったりする。そう思わせてしまう社会であるということが残念だよね。そこを信じられるようなこと、一緒にそういう実感を持ってもらえることが多分、くじらちゃんみたいに子どもたちを教える人たちが今できることじゃないかと僕は思うんだよね。

上の世代の「一生懸命さ」が空回りしないためのお手伝い


―少し話がずれてしまうかもしれないのですが、前々から羽地さんに聞いてみたかったことがあって。子どもと話すこと、子どもに教えることに、わたしはすごいリアリティを感じるんです。自分がやる姿を想像できるという意味でのリアリティもそうだし、子供が感覚している世界のほうに、大人の人としゃべっているよりもはるかにリアリティを感じるんですよね。それで、羽地さんがやっている管理職研修とか、ハラスメント研修をそばで見させていただいて、いつもすごいなあと思っているんです。そういう大人の方に向けた教育というのは、わたしにとってはすごく遠い、掴みがたいことのように感じてしまうのですが、羽地さんにとってはどうなんでしょうか。めちゃめちゃアバウトな質問になってしまいますが。

管理職の方や、会社を経営されている方にも、たぶんいろいろな苦労や大変なことがあると思うんです。もちろんそれだけじゃなくて、やりがいもある。そんなことを少しお手伝いすることが僕の仕事だと思っているの。
上の世代の方たちの多くは、その方たちなりの立場で一生懸命やっている。ただそのときに、良かれと思って昔のやり方のままやってしまう。けれどもそれを今やっても通用しない、的外れになってしまうことも多い。いま、そのことに直面して、戸惑っている管理職が多いんです。

―いまは通用しなくなったやり方というと、例えばどういうやり方のことですか?

 

(続きはこちら)

https://note.com/playbacktheatre/n/n7a255f1386c7

羽地朝和への逆1on1②〜ハラスメント研修〜

2022年03月14日月曜日 配信

【羽地朝和インタビュー】スタッフが社長に15分1on1をしてみる②「ハラスメント研修」

 

近年、組織開発のなかで部下の成長を促す方法として注目される1 on 1。
この企画では、それを立場を反転させて行うことを試みます。そのようすをインタビュー記事にしたものです。

話し手:
羽地朝和(プレイバック・シアター研究所所長・コンダクター・研修講師)

聞き手:
向坂くじら(プレイバック・シアター研究所スタッフ・詩人)

フルバージョン(note)はこちら↓

https://note.com/playbacktheatre/n/ncc2846caee32

 

詰め込み型の研修ではなく、話し合いをベースに

―今回は、ハラスメント研修について、ですね。わたしも、一回zoomアシスタントで入らせていただいたことがあります。そのときから、ぜひ一度羽地さんに話を聞きたいと思っていたんです。そのときは年配の男性管理職が多くて、わたしは最初、ビデオも切って、マイクもミュートにしていたんですけど、トラブル対応でやむなくちょっとだけ声を出したんですね。そうしたら、それまではなにもなかったのに、女性だとわかった瞬間、参加者の方からタメ口でチャットが届くようになりました。「ここどうなってるの?」「音が聞こえないんだけど」とか。敬語でも、一回わたしが対処方法をご案内したことに関して、「まだ音が聞こえないのですが……」みたいな追撃がくり返し来たりとか。なので、まあ、「ハラスメント研修、大変そうだなあ」という印象が……これはすごく偏見の籠もった言い方かもしれませんが、「ハラスメントをする人たち」に「ハラスメントをするな」と教えるって、大変じゃないですか?

くじらちゃんが若い女性だということで、主に男性の管理職が言い方や対応を変えてきた、ということですね。そういう社会や組織の体質がまだあるんでしょう。大きな問題の一つですね。くじらちゃんが言うことは、僕がハラスメント研修をやる上での大事な本質を突いている。
このところ、僕の中でもわかってきたところがあって。ハラスメント研修自体は、以前から各社やっているんですよ。だいたいが、座学で「ハラスメントに関する法律が変わりました」「裁判になったら大変ですよ」「だからハラスメントはいけませんよ」ということが扱われてきたんだけど、それをやっても本質は変わっていない。何も変わらないわけです。知識を与えられても行動や風土は変わらない。ましてや自分には関係ないと思うことには関心がわかない。ですから、僕はそういった形とは違った研修をやっていて、手応えがあるの。

―えっ、それでなにをやるんですか。知識の代わりに?

ただ「ハラスメントをやめる」ということがゴールではなく、継続して成果が出せる職場をつくりましょう、その為にみんなが生き生きと、言いたいこと話したいことを言い合える風土を作る。そのための研修です、ということを、まず最初にお伝えしています。不安なこと、不快なことがあったら、それを役職は関係なくお互いに言い合える、自分以外でも困っている人がいたら、「どうしたの?」「大丈夫?」って声をかけられる風土を作ることがゴール。それは、ひいてはみんなが働きやすい環境を作ることだし、そうなれば活性化したよい組織になる。それが継続した成果を生み出すには必須だから。
そのために、今日はハラスメントが起きない職場をどうすれば作れるかをみんなで考えましょう、というところからお伝えしています。「みんなで考える」ために大切なのは、これまでに見聞きしたり経験したハラスメントの事例やそのとき思ったこと感じたことを、お互いオープンに話し合える雰囲気を作ることですね。

―その話し合う人たちっていうのは、ハラスメントを受けているかもしれない側、ってことですか? 両方ありえるのかな。

そこがひとつのポイントなのですよ。おそらく今くじらちゃんは、上司から部下へのハラスメントを想定していますね。もちろんそれが多いけど、同じ一般社員同士で年齢の高い人から若い人、または男性から女性へのハラスメントもある。若い社員でも、派遣社員の方や外注先の方へハラスメントをする場合がある。最近は、部下から上司へのハラスメントもあります。
そういう意味では、誰もが知らず知らずのうちにやっているかもしれない。もしくは、誰もがそれを受けているかもしれない、ということを、研修前半でお話するようにしています。

 

みんなが働きやすい環境づくりのために、「ハラスメントをなくそう」という意識を共有する

よく、「じゃあ先生、NGワードを教えてください」と短絡的に言ってくる人がいる。そういう問題じゃないんだよね。もちろんNGワードはありますよ。だけどそれは本当に最低限のところで、同じ言葉でも、関係性とか、信頼関係があるかないか、言い方によって相手がどう受け取るかが変わってくる。結局、相手が嫌だと感じたらハラスメントになるので、そこが問題になってきます。ですからまずは、お互いの関係性をしっかりと作ったり、現状はどういう関係性なのかを気づくのが大事、というようなことを、「心の栄養ストローク」や「やる気のスイッチ」の解説からお伝えしています。

ーそれは正しいと思う一方で、どういうものがハラスメントかどうかはそのときどきによって変わりますよ、っていう言い方をすると、じゃあ結局なにがハラスメントなの? みたいなことにはならないですか?

僕が研修の中で主に扱うのは、パワーハラスメントと、ジェンダーハラスメントと、セクシャルハラスメントの三つです。その中のパワーハラスメントにも、さらに六つの類型がありますよ、っていう説明をする。ここは知識の講義になりますが、あくまでも、あいまいなものをみんなで明確にして議論をしやすくするための知識としてお伝えしています。

ーなんだろう。類型化するっていうのはどっちかっていうと被害者のためのものであるとも思います。まずしんどさがあって、「あ、これは過大な要求に当てはまるな、ハラスメントと言っていいのかもしれない」みたいなふうに、自分がされたことを被害であると認識していくっていうときは、類型がすごく役に立ちますよね。でも、加害している方には、「いや、これは過大な要求にはあたんないでしょ、だって関係性次第って言ってたし」みたいにとられてしまいそうにも思えます。

もちろん、どれも「本人が望まないことはしない」っていうところが第一なんだよ。くじらちゃんが言うように、類型化することは、「今思うとあれはパワーハラスメントに入るんだ」と意識化する、そのためのひとつの枠組みだね。

ー加害している方も、「あ、これは過大な要求になっちゃってるな」って気付けるのがいちばんいいんだろうな、と思いますけどね。

お互いに認識していれば、「過大な要求になってないかなあ」って話し合う材料になるよね。

ーあ〜。確かに、ハラスメントしたくないしされたくないよね、っていうのがお互いの中で共有できているっていうのが、一番理想な感じがします。

ハラスメントかハラスメントじゃないかってみんな迷う。そのときに、僕の持論なんだけど、こういう基準で考えてみたらどうですか、っていうことはまず投げかけます。同じようなその行為を上司に対しても行うかどうか、とかね。
それからハラスメントってね、当事者同士はハラスメントじゃないって思ってても、周りが見てハラスメントとして訴えられることもあるの。たとえば上司が部下を大きな声で叱りつけているのを、本人同士は関係性の上でハラスメントじゃないと思っていても、他の人はその声を聞くたびにビクッとして怖く感じる。そうすると、それはやめましょうっていうことになるんですよ。

ーそこで、「お互いはいいんだからいいじゃないか」とならないのは、ハラスメントをなくすそもそもの目的が「被害者にしんどい思いをさせない」だけではないから、ということなんですね。それ以上に、最初におっしゃっていた、「みんなが働きやすい組織を作る」、そしてその方が企業の発展に寄与する、という考え方がベースにある。

そのとおりです。みんなが安心して働ける職場を作るっていうのがすごく大事。

 

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https://note.com/playbacktheatre/n/ncc2846caee32

【羽地朝和インタビュー】スタッフが社長に15分1on1をしてみる①「新任管理職研修」

2021年11月02日火曜日 配信

近年、組織開発のなかで部下の成長を促す方法として注目される1 on 1

この企画では、それを立場を反転させて行うことを試みます。
そのようすをインタビューとして公開します。

話し手:
羽地朝和(プレイバック・シアター研究所所長・コンダクター・研修講師)

聞き手:
向坂くじら(プレイバック・シアター研究所スタッフ・詩人)

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新任管理職研修となると、何か暗いムードが漂うのでは

―今週(2021/10/11-17)はいかがでしたか?

実は、けっこうキャンセルがあって、研修は月曜と金曜の二回だけでした。それぞれ新任管理職研修をやったの。新任管理職ってわかる? 今年度管理職になった、つまりこれまでは管理職じゃなかった方に向けた研修ですね。同じ職場にいても、普通に働くのと、管理職として働くのとでは違うのですよ。

―わたしの偏った認識では、「組合を抜ける」みたいな……

えっ。笑 そういう視点なんだ、なんでそんなこと知ってるの。

―夫が言ってました。

まあ、もちろんそういう見方もありますね。ただ、それはあくまでもその会社の組織上のことですね。何が違うか簡単に言うと、野球の選手と監督の違い。選手はフィールドに出て試合をする、監督はフィールドに出ない。その代わりに何をするかっていうと、勝つために指示を出して、選手を動かしたり代えたりする。

―働く側から働かせる側になる、みたいなイメージはめっちゃあります。

そうだね。おもしろいからその面で話をしようか。
それはあるかもしれないけれど、僕は現代においてはあてはまらないと思う。昔の管理職は、資本家、経営者と同じ会社側。ある意味では労働者を管理する側、という構図があった。
その傾向は、特に欧米が強いと思ってるの。例えば欧米だと、企業の幹部とそれ以外とでは食堂が違う。ところが、日本はみんな一緒。管理職と管理職じゃない人とで、待遇はそんなに大きく変わらない。
逆に日本の場合はもっとすごくて、管理職が搾取されている時代になっている。どういうことかと言うと、社員には残業代が出るけど、管理職になると残業代が出ないんだよ。最近は、「残業させたらいけない」とよく言われてるでしょ。でも仕事量は減ってない。じゃあ、そこは誰がやっているか、というと、全部管理職がやっている。

―じゃあ、新任管理職研修となると、何か暗いムードが漂うのでは。

そこを僕は明るくする、というか……新任管理職研修に行くと必ず、「今の若い人は誰も管理職になりたがらない」と言われる。

―それは人事の方が?

ううん、参加者が。初めは「だから若者はだめですね」という口調なの。でも、僕がそこで必ずハッキリと言うことにしているのは、「いや、それ皆さんが魅力がないからですよ」ということ。「皆さんがもしかっこよくて生き生きしてて、管理職は最高、管理職だからこんなに仕事がハッピー、という姿を見せていたら、みんな管理職になりたがるはずだ」と。
ですから、皆さんがいかに輝いているか。で、プライベートも仕事も含めて、幸せに生き生きとしているか。少なくともそういうことが、直接口で言わなくても体から滲み出ていたら、みんな管理職に殺到しますよ。ですから、みなさんぜひ若い人から見てあこがれの管理職になれるように、今日一日学びましょう……という導入が最近は多いかな。

 

題達成機能と集団維持機能

―新任管理職研修があるということは、管理職になる上で必要なことがあるわけですよね。

二つあります。技術やスキルを学ぶことと、心構えを持つこと。よく企業の言葉ではマインドセットともいうね。多くがこれまでと同じ職場で管理職になっているから、共に働く人も一緒、やっている仕事も一緒、でも立場が違う。っていうときに、これまでとなにが違うかって言うことです。

―技術やスキルでいうと、具体的に何が必要になるんですか?

マネージメントスキルです。

―マネージメントスキルって、言葉は聞きますけど、あんまりよくわかりません。

大きく分けると、課題達成機能と集団維持機能の二つの機能があります。課題達成機能は、とにかく決められた数字を上げて、職場全体の目標を達成する。もしくは、そこで起きた問題や課題を解決する。これがひとつ。
で、集団維持機能というのは、チーム、組織をよい状態に保つこと。要は、皆が生き生きと働ける場づくりとか、皆のモチベーションだったり一体感を高めるとか、場合によってはちゃんと育てる環境を作るとか。あとはまあ最近だと、メンタルヘルスとかストレスに関してもよい状態を保つ。
この二つを両立させることです、っていう風に僕は言ってます。ただし、これは片方さえあればいいというわけではなく、やっぱりどちらもできないといけないでしょう。課題を達成するにはみんなが生き生きと助け合うことが必要だし、もう一方では仕事にしっかりと取り組んでアウトプットを出すことがみんなの成長にもつながる。だから常に相互に補完し合っている。

 

「わかる」と「できる」の間をどう埋めるか

―前から、企業研修に対して疑問に思っていることがあって。たとえば、「課題達成や集団維持が大事ですよ」と言われて大事だとわかる、ということと、それが実際にできる、ということとは、すごく別のことですよね。

そのとおりです。

―そんな中で研修は一日しか時間がない。というときに、今回で言うとどこからどこまでを研修の中で扱うことになるんですか?

まず、必要な知識はお伝えします。そして僕の場合は、その次に「自分の仕事エネルギーが10だとしたら、課題達成と集団維持の比率は何:何ですか」という問いかけをして、皆さんに書いてもらう。すると、多くの人から「課題達成8、集団維持が2かな」というような話が出てくる。
そこで、「組織、チームがこれからちゃんと継続的に成果を出し続けるためには、本来何:何ですか」と問いかけをする。すると、「あーやっぱり5:5かなあ」と返ってくる。「じゃあ、8:2から5:5にするためには何を変えて何を止めないといけませんか」……と考えてもらうと、「あぁ、ちゃんと部下の育成とか、マネージメントとか、そっちをやらなければ出来ませんね」みたいな気づきが起きてくる。そこではじめて、じゃあこれから具体的に何をやるか、何を止めて何を始めるか、ということをグループで話してもらう、という時間にしています。一日だと、確かにここまでだね。

―バランスをとるのが肝要ということですかね。

えっと、僕はね、バランスをとるというより、8:2がいいと自分で思ったらそれでもいいと思っているの。何も5:5をやれとは全然思っていない、これもはっきり言います。もしね、例えば緊急事態だったら、もう10:0だよね。でも10:0でずーっと続くと育たない、そのうちみんなの心がバラバラになって、疲弊しちゃう。

―集団維持側の緊急事態、ということもありますもんね。

そう、逆にね。みんながぞろぞろやめちゃったようなときにはまずケアしてあげないといけない。

 

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with/afterコロナからBeyondコロナへ

2021年09月10日金曜日 配信

毎年8月に食品メーカーK社の新任管理職研修を担当しています。

その年に管理職に昇進した各部門の精鋭たちが合宿で集い、学び合い、ビジョンを語り合います。初日の夕方から参加される社長に、各グループが「組織の問題とその解決策」をプレゼンテーションし、それに対して忌憚のないフィードバックを社長が返します。夜の懇親会でビール瓶を片手に社長が各テーブルをまわり、若手管理職と熱く語り合う姿が印象に残るこの合宿を毎年楽しみにしているのですが、今年はホテルの会議室で通い形式での実施となりました。
緊急事態宣言が続くなかで、感染対策に細心の注意を払って首都圏の人は集合し、地方の工場勤務3名はオンラインで参加しました。研修担当者の、この研修は合宿は無理でもせめて集合で実施したいという意気込みが実を結び、今年も活気に満ちていました。残念ながら懇親会はありませんでしたが、社長のフィードバックは直球ストレート、真剣なものでした。

昨年の今頃に「with/Afterコロナ?」というテーマでいくつか原稿を書きました。あれから1年が経ちましたが、状況はafterではなく未だ混迷しています。この状況だからこそ、見失ってはいけないことは何なのか、そもそも大切なのは何か、この状況を乗り越えてどうなりたいのか、を立ち止まって確認することが求められます。
組織の人材開発が果たすべきことを見失わずに企画されたこの研修で、若手リーダーは自分の成すべきことや目指す姿を描き、それを共有して、ビジョンの実現を確認し合いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▲研修会場からパラリンピックが行われている国立競技場が見えました

(羽地朝和 2021/09/08)

With/Afterコロナとメンタルヘルスケア(コラム掲載のお知らせ)

2020年08月01日土曜日 配信

プレイバック・シアター研究所所長羽地朝和が、JMAマネジメント誌上にコラム「With/Afterコロナとメンタルヘルスケア」を寄稿いたしました。

 

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コロナ禍によるテレワークの普及、労働環境の変化を踏まえ、羽地の専門分野であるメンタルヘルスケアに焦点を当てたコラムです。
主に管理職の方に役立つ内容となっております。

以下のリンクより、当HP上でもご覧いただけます。
ぜひお読みください!

with/afterコロナとメンタルヘルスケア

(引用元:JMAマネジメント誌 2020年8月号 特集「『組織』と『人』の新しい関係(ニューノーマル)」)